医療ボランティアの国際NGOでのインターンシップ

韓国でのNGOインターン活動を終えて  
                                  Cさん(早稲田大学、社会学専攻) 

 わたしが韓国でインターンの活動をした団体は、韓国にある保健医療関係のNGOであった。今回のインターン活動は一年間という交換留学プログラムを終えたあとに残った長期休暇を韓国という国で有意義に使いたいという気持ちから始めたものであった。団体の具体的な活動内容は、海外のさまざまな場所で自然災害や紛争等がおこったときに発生する難民や被災民に対する援助活動で、わたしが担当した業務は、日々の雑務からはじまり、協力体制を構築しようとする日本の同類のNGO団体との連絡・提携の補助であった。留学期間中に培った韓国語の能力を活かし、日本での保険医療NGOのリサーチ結果の翻訳や報告書作成などを主に行った。職場を共にする職員の方は主に女性の方が多く、協力的かつ親切な方々ばかりで、とても働きやすい環境であった。

 本来、大学で社会学を専攻するわたしにとって、保健医療の分野に関する知識というものは皆無であり、全く新しい領域での活動であったが、紛争や貧困などが多発する発展途上国に密接に関係する本団体の事業に携わるということは非常に刺激を受けることの連続であった。社会基盤が未発達な場所での災害発生による二次災害、三次災害の誘発は、その社会全体の問題であるとも捉えられることができるし、それを統括する政治機構の問題でもあると考えられる。また、2011年の東日本大震災によって復興のまっただ中にある日本にとっても、本団体のような活動をする保健医療NGOの存在は重要な存在となってくる。日本にある保健医療NGOに集まる民間人からの寄付金が年間40億円にも及ぶという事実を知ったということも、わたしにとっては大きな出来事であった。

 韓国という国で実際に働くということについては、今回が初めてではなかったが、自分が実際に韓国人のなかに身をおいて相互作用しながら働くことに特に問題は無いほどの言語能力があるという実感は、大きな自信にもなった。特に今回のインターンでは具体的に特定の分野(日本関連)の業務を任され、それについてのある程度の成果をまとめて報告するという経験は、自分がこの団体において一つの重要な役割を担っているという意識が持てて非常にやりがいのあるものであった。

日本で生まれ、その環境のなかで育ってきたわたしにとって、今回のインターンの最大の目的は、韓国という国を少しでも理解するということでもあった。二ヶ月間というインターン活動を終えて、学んだことはたくさんあったが、一言で今回の経験を表すなら、それぞれの国が持つ特性がどんなものなのか、またそれを知ることにどういった意味があるのかについて考え続けた過程であったように思う。日本とは隣国の関係であり、文化的背景も共有している部分が多い国ではあるが、”似ているようだが違う”韓国という国がいったいどういった国なのか、初めは常にそれを把握しようと務めたが、現地の人々と共に働くなかで次第に、では私が暮らしてきた日本という国はどういった国なのだろうかということにも並行して意識が向いていったように思う。韓国人の同僚にとってはもちろん、わたしにとっての第一番目の認識は”日本から来た人”であり、彼らがわたしに対して抱く最初の感心事も当然日本という国に関わるものになるわけである。彼らが投げかける質問は、常にわたしに日本がどういった国であるのかということを考えさせた。未だに彼らに明快な説明を与えることはとても難しいように思われるが、韓国という国の理解が深まるにつれて、またそれと比較していくなかで、それでも自分なりの認識が形成していったように思う。

個人的にこの国はああでこの国はこうだと一言で定義してしまうことには抵抗もあるし、果たしてそれをしてしまっていいのかという恐れもあるのだが、文化的な面で観察できるその国の人々の傾向に、優劣をつけるのではなく、良い点、悪い点を導き出して今後の教訓にするということには意味があると思う。良い点は学ばせてもらい、悪い点は戒めにする。韓国、日本という2つの国を考え続ける今回のインターン活動で見えてきたそれぞれの良い点、悪い点を、それぞれ補完し合うような発想を持つことができたのが、またそれを持つに至る過程を体験できたことが、今回の活動の一番の成果ではないだろうか。

 またこのような体験を他のどの国でもない、韓国でできたということは私にとって非常に大きな意味をもつことである。これまで韓国人でありながらも日本でずっと人生を送ってきたわたしにとって、韓国という国は自分の母国であるという強い親近感のようなものを感じながらも外国であったわけだからだ。すべての活動を終えた今では、韓国に対して一般に感じるような”異国の壁”は感じなくなったように思う。あるのは地理的に2つの国を隔てる海と、それを越えるために必要な飛行機を乗るための手間だけであり、言語的な問題もなく、韓国社会にもある程度理解が生じた今では、この国を将来の自分の人生の生活範囲の選択肢に含めて考えられるようにさえなった。恐らく韓国ではない他の国で職場体験をしていたなら、このように考えることはできなかったのではないか。ここで作ることができた同僚たちとの保健医療NGOというネットワークも、今後も日韓の関係の中で暮らしていく在日韓国人のわたしにとっては、何かに活かしていけるものになるのではないかと思う。

 短いようでもあり、長いようでもある2ヶ月間であったが、この期間にあった出来事を思い返すとすべての瞬間が勉強の場であったように思う。帰国後、日本でこれからの生活をするにあたっても、今回の貴重な体験から学んだことを自分のキャリアとして活かしながら暮らして行ければいいと思う。